こんにちは、BMW整備士の管理人です。
今日は、BMWオーナー、特にE90やF30などE系・F系世代に乗っている方なら、誰もが一度は「なんで?」と思ったことがあるであろう、あの謎について解説します。
それは…
「なぜ旧世代のBMWは、エンジンを完全に停止させるために、スタートボタンを2回押さないといけないのか?」
という、地味だけど深すぎる疑問です。
🤔 「あるある!」な状況

こんな経験ありませんか?
国産車からBMW(E90やF30)に乗り換えた友人が、こう愚痴ります。
「エンジン切ったのに、なんでナビも音楽もつきっぱなしなんだよ!バグってんの?」
でも、最新のG20や G21に乗っている人は、こう言います。
「え?私のは1回押してドア開けたら全部消えるけど?」
この違い、実はBMWの電子制御に関する”思想”そのものが、世代で根本から変わった証拠なんです。
📊 まず押さえておきたい:世代による操作の違い
| 世代 | 代表モデル | エンジン停止方法 | 完全シャットダウン |
|---|---|---|---|
| E系 | E90 3シリーズ (2005-2012) | 1回押し | 2回押し必須 |
| F系 | F30 3シリーズ (2012-2019) | 1回押し | 2回押し必須 |
| G系 | G20 3シリーズ (2019-現在) | 1回押し | 自動完全停止★ |
整備士の視点: 「工場に入ってくるBMWの世代で、トラブル内容が全く違う。G系は『電源が切れない』というクレームが激減した」
🔧 【E/F系】なぜ「2回押し」が必要だったのか?

「手動による段階的シャットダウン」という哲学
E90やF30などの旧世代BMWは、意図的に2回押し設計にしていました。
これは設計ミスではなく、確固たる哲学に基づいています。
理由①:オーナーの利便性
シチュエーション:
- コンビニで少し停車
- エンジンは切りたいけど、音楽は聴き続けたい
- テレビ番組のキリの良いところまで見たい
E/F系の挙動:
- スタートボタン1回押し → エンジン停止
- ナビ・オーディオ・テレビはアクセサリーモードで稼働継続
- 満足したら、スタートボタン2回目押し → 全システム停止
整備士の証言: 「お客さんから『エンジン切っても音楽聴けるのが便利』という声は多かった。特に長距離移動の休憩時とか」
理由②:複雑な電子システムの保護

E/F系世代から、BMWの電子制御は劇的に複雑化しました。
増加した電子モジュール:
- CAS(Car Access System:キー認証システム)
- FEM(Front End Module:前部電子制御)
- iDrive(情報統合システム)
- 各種ECU(エンジン、トランスミッション、ブレーキなど)
これらのモジュールを、安全に・段階的にシャットダウンする必要があったんです。
整備士の経験談: 「いきなり全モジュールを停止すると、稀にCASがフリーズする。2段階停止はシステム保護の意味もある」
「1回目→エンジン停止、2回目→システムOFF」の設計意図
BMWの設計思想:
「オーナーの利便性とシステムの安全性、両方に配慮した”意図的”設計」
これは「バグ」でも「不便な仕様」でもなく、当時としては最適解だったんです。
🚀 【G系】「自動状態移行」という革命

2019年登場のG20(G系)で、BMWの電子制御哲学は根本から進化しました。
「イグニッション」という概念の消失
従来の車は「イグニッション ON/OFF」という明確な状態でした。
しかし、G系では**「ドライブ」「ステイ」「パーク」**という3つの”状態”で車を管理します。
G系の3つの状態
状態①:ドライブ(走行中)
- エンジン稼働
- 全システム ON
状態②:ステイ(車内滞在)
- スタートボタン1回押し → エンジン停止
- オーナーがまだ車内にいることを車が認識
- ナビ・オーディオは稼働継続
状態③:パーク(駐車)
- オーナーがドアを開けて車外に出る動作を検知
- 車が自動的に完全シャットダウン
- 全システム停止
整備士の感動ポイント: 「G系を初めて触った時、『車が意思を持っている』と感じた。オーナーの行動を予測して、勝手に最適な状態になる」
手動での完全シャットダウン方法
もし、ドアを開けずにすぐ完全停止したい場合:
オーディオのボリュームボタンを長押し(20〜30秒)
→ 強制的に全システム停止
整備士のアドバイス: 「急いでる時はボリューム長押しが便利。でも基本は自動でOK」
⚠️ 【禁断の知識】3回押しで発動する「PADモード」とは

さて、ここからが本題です。
BMWには、一般オーナーが絶対に知らない隠しコマンドがあります。
それが、**「3回押し診断モード(PADモード)」**です。
PADモードとは?
PAD (点検・分析・診断)
発動方法: エンジンオフの状態で、スタートボタンを3回素早く押す
PADモード中に起こること

- すべてのコンポーネントが強制的に常時稼働
- 省電力機能が全て無効化
- メーターパネルに診断状態表示
- iDriveが診断用インターフェースに変化
整備士の解説: 「PADモードは、BMW専用診断機《ISTA》を接続するための”業務用起動状態”。普段はシステムが自動でスリープになるが、PADモードでは全コンポーネントが一斉起動し続ける」
PADモードが必要な場面(整備士のみ)
- コンポーネントの詳細診断
- ソフトウェアアップデート
- ECUのプログラミング
- 複雑な故障診断
🚨 なぜディーラーは「3回押し」を絶対に教えないのか

ディーラーの整備士は、この「3回押しコマンド」を絶対に一般オーナーに教えません。
その理由は3つあります。
理由①:一般ユーザーには一切不要の機能
PADモードは、診断機を接続するためだけの業務用機能。
普通のオーナーが使う場面は、100%存在しません。
理由②:バッテリーが確実に上がる
最大の危険がこれです。
PADモード中は、すべてのコンポーネント常時稼働します。
結果:
- 数時間でバッテリーが完全放電
- バッテリー上がり確定
整備士の実体験: 「研修中、PADモードを発動したまま昼休みに入った同僚がいた。戻ってきたらバッテリー完全死亡。上司に怒られてた」
理由③:クレーム・責任問題の回避
もし教えたら起こること:
- オーナーが興味本位でPADモード発動
- 終了方法を知らずに放置
- 数時間後、バッテリー上がり
- 「ディーラーに言われた通りにやったのに!」とクレーム
ディーラーの本音: 「教えてもメリットゼロ、リスクだけ。だから絶対に教えない」
🔍 【実践】各世代の正しい操作方法まとめ
E/F系(E90、F30など)
通常のエンジン停止
- スタートボタン1回押し → エンジン停止(アクセサリーモードON)
- スタートボタン2回目押し → 完全シャットダウン
iDrive再起動(フリーズ時)
- オーディオのボリュームボタンを20〜30秒長押し
緊急強制シャットダウン
- スタートボタンを10秒間長押し
- 注意:走行中は絶対に使用禁止!
G系(G20、G21など)
通常のエンジン停止
- スタートボタン1回押し → エンジン停止
- ドアを開ける → 自動で完全シャットダウン
手動での即座完全停止
- オーディオのボリュームボタンを長押し
iDrive再起動
- ボリュームボタン20〜30秒長押し(E/F系と同じ)
全世代共通:PADモード(診断モード)
発動方法
- エンジンオフで、スタートボタンを3回素早く押す
終了方法
- スタートストップスイッチを押す
- いつものオフの操作で解除されます
⚠️警告
絶対に一般使用しないでください。バッテリー上がりの原因になります。
🛠️ 整備士が教える「知っておくと便利なコマンド」
①iDrive再起動コマンド

使用場面:
- iDriveがフリーズした
- ナビが応答しない
- オーディオが固まった
方法: オーディオのボリュームボタンを20〜30秒長押し
整備士の実例: 「お客さんから『画面が固まった』という入庫が月に数回ある。このコマンドで8割は解決する」
②緊急強制シャットダウン
使用場面:
- エンジンが停止しない(稀なトラブル)
- システムが完全にフリーズ
方法: スタートボタンを10秒間長押し
⚠️絶対守ること:
- 走行中は絶対に使用禁止
- 停車中のみ使用
- 最終手段としてのみ使用
整備士の警告: 「このコマンドは文字通り”強制終了”。走行中に使ったら、パワステもブレーキアシストも全部死ぬ。絶対にやるな」
❓ よくある質問(整備士が答えます)
Q1: PADモードを発動してしまった。どうすれば?
A: イグニッションオフにする
応急処置:
- スタートストップスイッチを押す
- エンジンかける
- いつものオフの動作をすれば解除することができます
Q2: E/F系で、1回押しで完全停止させる方法は?
A: 標準機能では不可能です。
代替案:
- 2回押しに慣れる
- コーディング変更(非推奨、保証対象外)
Q3: G系で、勝手に停止するのを防ぎたい
A: 「ステイ」モードを活用してください。
方法:
- エンジン停止後、ドアを開けない
- 車内で音楽やナビを使用→バッテリー上がりの危険性あり、あくまでも通話などが切れないようにするため
- 完全に降りる時だけドアを開ける
🎯 まとめ:世代別「哲学」の理解が重要

E/F系の哲学:「手動による段階的シャットダウン」
- オーナーが自分で操作することを前提
- 電子システムの安全な停止
- 利便性(音楽・ナビ継続使用)の重視
整備士の評価: 「当時としては最適解。でも今見ると、オーナーに負担をかけすぎていた」
G系の哲学:「自動状態移行」
- 車がオーナーの行動を予測
- 最適な状態に自動遷移
- 「イグニッション」概念の廃止
整備士の評価: 「これこそが未来の車。オーナーは何も考えなくていい」
「3回押しPADモード」の正しい理解
絶対に守ること:
- 一般使用は絶対禁止
- 知識として知るだけにする
- 興味本位で試さない
- バッテリー上がりのリスクを理解
整備士からの最後の警告: 「PADモードは、私たち整備士でも慎重に扱う。一般オーナーが触る理由は、100%存在しない」
🔮 【整備士の予想】今後のBMWの進化
完全自動化の未来
- 音声認識でのシャットダウン(「BMW、お休み」で停止)
- スマホアプリからの遠隔操作
- AI学習によるオーナーの習慣予測
診断モードの一般化?
- スマホアプリで簡易診断
- 故障予測機能
- PADモードの安全化(タイムアウト機能)
整備士の願望: 「PADモードにタイムアウトを付けてほしい。30分で自動解除とか」
【重要】この記事を読んだあなたへのお願い
✅やっていいこと
- E/F系で2回押しを理解して使用
- G系で自動停止を活用
- iDrive再起動コマンドを覚える
❌絶対にやってはいけないこと
- PADモードを興味本位で試す
- 走行中に強制シャットダウン
- 知識をSNSで広めて他人に被害を与える
整備士からのお願い: 「この記事は、正しい知識を伝えるために書きました。でも、知識を悪用しないでください。特にPADモードは、本当に危険です」
※この記事は、BMW整備士としての実務経験と2025年10月時点の情報に基づいています。PADモードの操作は自己責任で行ってください。当ブログは一切の責任を負いません。
あなたのBMWは何世代ですか?「2回押し」で困った経験があれば、コメントで教えてください!

コメント